搭載や誘導、貨物など、グランドハンドリングには多くの職種があります。そこで働くすべての人に共通するのは、安全とお客さまのためを想って仕事に就いていることです。
そんな第一線の現場で働く社員をサポートするのが間接部門となります。それぞれのフィールドで仕事がスムーズに行えるよう、空港との調整をするほか、社内の人財育成や配置、器材の調整、よりよいサービスを提供するための企画運営など、その業務は多岐にわたり、グランドハンドリングの現場スタッフを支えています。
この間接部門の社員のほとんどは現場を経験しています。その為、現場の仕事の大変さや問題点などを的確に把握し、改善するために日々奔走しています。
現場で働く人たちが集中して仕事ができること、そして働く環境を整えること……それが安全と品質を向上し、お客さまの満足につながります。間接部門のスタッフも現場のスタッフ同様、お客さまの笑顔を思い浮かべて、日々の業務に取り組んでいます。
また、長年にわたる航空機客室や機外クリーニング作業で培った技術・技能を応用して、JGSグループではビルメンテナンス事業も展開しています。建物の清掃や設備管理、ホテルの客室整備を中心に幅広いサービスを提供し、航空機を利用するお客さまだけでなく、より多くのお客さまに「満足」を届けているのです。
「昔から旅行が好きで大学では観光の勉強をしていました。ゼミの関係で学生のころからJALグループ社員と関わる機会が何度かあり、そこでお会いした社員さんの印象が強く残っておりJALファンになりました。就職活動で様々な会社説明会にも参加しましたが入社の決め手は当社の説明会に参加した際に感じた『人の温かさ』でした。」そう語るのは入社2年目の大野みれ。現在JALグランドサービス成田支店の総務を担当する。
フレッシュな笑顔の一方で物腰柔らかく落ち着いて話すそのギャップに、周りからの信頼が厚いのもうなずける。
「先日、ミスをしてしまって少し落ち込んでいたのですが、、、その時、現場の課長からメールが届きました。ミスをした後の私の対応に『きめ細やかな対応ありがとう』とわざわざメールをいただいたんです。落ち込んでいた分、その言葉ですっと気持ちが楽になりました。
他の先輩からも『確認確認。現場だけじゃないよ。』と明るく声をかけてもらい、客室部門で働いていた1年目、安全に対してあれほど愚直に確認していたことを改めて思い出しました。」
グランドハンドリングという仕事はチーム内の協力や連携が欠かせない。確認会話やお互いがフォローし合える関係。その意識は現場スタッフも間接スタッフも共通して全員が一つのチームである。
「ここでの私の仕事は、一般的な総務が担当する仕事だけではなく、経理に関することも仕事の一つですし、『パソコンの調子が悪い』『蛍光灯が切れた』といわれれば駆けつけます。ある意味何でもやります。」
社員800人以上が在籍する成田支店において、大野のいる総務に訪ねてくる社員は多い。
そんな大野は自分でも「助けたがり精神なんです」というくらい、人の為に力になれることが苦にならない性格。「多くの社員が尋ねて来てくれるのは大変だけど、頼りにされることが嬉しい。困っていることは自分の仕事が少し進まないくらいです。」と笑顔で語る。
取材中も総務窓口に誰か社員が問い合わせに来ていないか、目配せをしている大野であった。
そんな多岐にわたる業務をどのように管理しているのか。
「毎日終業時間になると、やり残したことを箇条書きにし、優先順位をつけてリスト化しています。そのおかげで翌日にどの業務を優先して行うのか一目瞭然となり、作業効率も上がっていると実感します。
異動した当初は、業務に追われることで心に余裕がなくなりがちでしたが、リスト作成によって、自分のやるべきことが見える化され、心に余裕も生まれるようになりました。私は業務に追われると、心に余裕がなくなり、『利他の心』が『私心』の裏側に隠れてしまうんです。」
業務のリスト化は効率よく仕事をする為だけではないと大野は話す。「利他の心を忘れず過ごしていく為です」と。
「シアトルに来て2年になります。シアトルでのJAL便就航時にJALグループの様々な部署からメンバーが集まりました。偶然ですが私を含めメンバーの8割が関西出身です。したがって公用語は英語と関西弁です。」そう話すのは入社12年目の神谷智史。身長約190cmの大きな体は現地のアメリカ人とも引けを取らない。
「主な業務は、各部門と諸調整を行う『Station operation業務』と、搭降載の安全管理や指導を行う『Lead Load Master』です。搭降載は現地のスタッフが作業を行っているので、様々な価値観を持つスタッフとスキルを高めていくことは難しくもありますが、日々大きなやりがいを感じています。」
昼から夕暮れにかけて表情を変えるシアトルの景色とともに、神谷の表情からも充実感がうかがえた。
入社以来、羽田と成田両方の空港で搭降載業務に従事し、その後業務部門を経て、現在に至る。2019年3月31日のJAL便シアトル線就航準備から携わっている。
「私のミッションは搭降載業務の安全を構築すること。就航までの限られた期間の中で、マニュアルの作成や現地スタッフのトレーニング等、環境や設備を整えていきました。すべてが順調ではありませんでしたが、ここにいるのはJALグループ各専門分野からの集団、まさにチームJALの強さを感じました。
就航当日の朝は忘れられません。定刻に鶴丸の機体が日本へ向けて飛び立つ瞬間は言葉では表せないくらいの感情がこみ上げてきました。我々JALメンバーだけではなく現地のスタッフみんなの協力のおかげでこの日を迎えることができました。」
仕事に対するこだわり、心がけを聞くと実にJALらしい答えが返ってきた。
「『JALフィロソフィ』の項目でもありますが『昨日よりは今日、今日よりは明日。』これは日本にいる頃から意識しています。
日常業務でできなかったことや知らなかったことがあればそのままにせず、その場で復習、習得する。一日一日少しずつでも成長するように心がけています。
あと、英語は継続して勉強していてよかったなと実感しています。学生時代も英語は勉強していましたが、会社に入ってからは英語を使う機会が減りました。ただ海外派遣や転勤等いつかチャンスが来るんじゃないかと思って勉強は続けていました。」
「海外からJGSの仕事を見て強く思うことは、やはりJGSの作業は世界一だなと改めて思います。例えば、安全性や定時性を徹底して追及するところ。確認行為ひとつとっても世界一のプロ集団だと感じます。シアトルのスタッフに日本でのやり方を指導すると『そこまでやっているのか』と驚かれるほどです。
そんなJGSの強みをもっと伸ばし、海外空港を含めたJALの全就航空港にて質の高いグランドハンドリングを提供できるよう、JGSの仲間と一緒に進めていきたい。」
自身の想いを熱く語り、時には冗談も交えながら話す神谷。そんな彼の人間性が、遠くシアトルの地で文化や価値観の違う環境においても活躍し続けられる秘訣なのかもしれない。
「まさか自分が・・・最初は戸惑いもありました。飛行機が好きで、飛行機の側で働きたいと思って入社しましたから。それがホテルやビルになりましたから。でも、グランドハンドリングと近い部分がたくさんあるんです」。
そう語るのは松本将央。松本は成田空港で誘導と搭載の業務にそれぞれ2年半ずつ就いた後、間接部門に異動。総務を経験し、JALグランドサービス本社の運送企画グループで人員計画やマニュアル作成、JALへの出向で同様にマニュアル作成を経て、現在のビルメンテナンス事業へと異動になった。
ビルメンテナンス事業は、JALグランドサービスのなかでも特殊な部署で、唯一、空港外の会社がクライアントとなる。ビルやホテルの管理が業務の中心で、具体的にはホテル客室や商業施設、オフィスビルなどの清掃、維持管理をすることだが、実際に作業をするのではなく、それらの業務を委託する先の管理が主な業務。現在、同部署が手掛けるホテル・ビルは関東を中心に100軒近くにも上る。
「グランドハンドリング(空港)もホテルも24時間、365日、休みなく動いています。そして、お客さまに最高のサービスを提供することも共通です。そこにやりがいを感じています」。そう松本は語る。
一見、全く異なる分野だが、多くの面でグランドハンドリングの技術と経験、そして何よりもJALグランドサービスの品質が活きている。
「例えばホテルの客室清掃では、チェックアウトからチェックインまでの短い時間で、すべての客室の清掃を終えなくてはいけません。それは、グランドハンドリングの客室と同じ。直結しているんです。効率良く、最高の品質で作業をするためにはどうすればいいか・・・そこに客室での技術や経験、ノウハウが活かされているのです」。
そう語る松本。そこには松本がこれまで歩んできた経験(マニュアル作成など)も存分に活かされていることは言うまでもない。
そして、航空機の客室と同等かそれ以上に高い品質を求められるホテルの客室清掃。そこで培われた技術と品質は、グランドハンドリングの業務へとフィードバックされ、相互で高め合っている。
「JALグランドサービスという会社ですが、一歩社外に出ると『JAL』と見られるので、その看板を背負っている、JALグループの一員であるという意識をつねに強く持っています。JALだから信頼されているという部分もありますので、その期待と要求に高い水準で応えるためにも、JAL品質のサービスを提供することは、航空機もホテルも同じです」。
もしかしたら出張先で宿泊したホテルにJALグランドサービスが関わっているかもしれない。我々が知らない場所で、そのサービスと品質が広がり、利用者を満足させているのだ。